獄寺×綱吉 数年後設定
ふんわりと香ばしい匂いがして目が覚める。
ぐぅとお腹が鳴るが、まだ脳は半分寝てる状態なので羞恥心が湧かずぼーっとしたまま室内を眺めた。
「・・・・・・ここ、」
徐々に頭が冴えてくると、自分が寝ている部屋がいつもと違うのに気がつく。
そしてすぐに誰の部屋かがわかった。
「ごくでらくんの・・・」
起き上がりの舌足らずな口調でこの部屋の持ち主の名前を呟く。
「起きられましたか、10代目」
突然枕元の上から声がかかったので、綱吉はビクッと反応しながら体ごと声の方を向いた。
「いたんだ、獄寺くん」
「ハイ!さきほどからずっと10代目のお顔を拝見してました!」
寝ていた時の姿勢のままボーっとしていたので、視界の範囲外にいた彼に全く気付かなかった。
若干頬を染めながら綱吉は唇を尖らす。
「起きてるの気づいてたんだろ。声かけてくれればいいのに・・・」
「スミマセン・・・寝惚けた10代目があまりにお可愛らしかったのでつい」
彼もまた頬を少し染めてぽりぽりと照れくさそうに掻いた。
綱吉はさきほどよりも頬を赤く染めながら「もう」と呟くと完全に上半身を起した。
「良い匂いがするね」
「朝食のご用意が出来てますよ。食いますか?」
「うん」
ベッドに腰かけている綱吉に獄寺が手を差し出す。
綱吉は微笑むとその手に自分の手を差し出した。
「お手をどうぞ、お姫様」
「ありがとう、王子様」
二人で顔を見合せて噴き出す。
笑い声がシンプルな獄寺の部屋に響き渡った。
「今日も愛してます」
「明日は?」
「明日も愛してます」
「未来は?」
「未来も愛してます。10代目は?」
「オレも。今日も、明日も、未来の獄寺くんも好きだよ」
「好きじゃダメッス」
「愛してるよ、はやと」
つま先立ちで彼の耳元に囁くと、彼の顔が沸騰したように赤くなった。
オレは悪戯が成功したようにくすくすと笑う。
彼は困ったように眉を下げながらも、嬉しそうに笑った。
オレだけのシンデレラ
ガラスの靴などなくても、オレはただ一人の貴方を見つけ出す